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シェードテイクで必要な色彩学の基礎と5分で出来る色彩テスト

チェアサイドでシェードテイキングを行う際に、どのように指示を送ればよりわかりやすく歯科技工士に伝わるのだろう。
そう疑問に思う歯科医師も多いのではないだろうか。
今回の記事では、チェアサイドとラボサイドのやりとりに注目しながら、色情報を正確に伝えるための方法を紹介したい。

1.『明度』『彩度』『色相』の違いを理解する

以前、ある書籍で読んだ論文に、このような記述が書かれていた。

色の修正時に歯科医師側から”色が明るかった”と伝えられた場合は、”色が薄い”という意味であるため、彩度を上げ”色を濃く”しましょう

これは歯科医師の言いたいことを察する必要があるという主旨だと思うが、同じ様な言い回しは歯科技工士のセミナーなどでも度々耳にすることがある。
しかし、こういった色の伝達方法では、そもそも色情報の基準が存在せず、いつまで同じやりとりを続けようとも、双方に不安やストレスが残り続けるだろう。

『明度』『彩度』『色相』の違いを完全に理解することは、シェードテイクを行う上での大原則であり、最初に覚えるべき基礎であるため、それぞれの伝達方法を把握しておこう。

1-1.明度とは何か

明度とは、読んだまま「明るさ」「暗さ」を表す指針となる。
これは対象の色の質感を表現する際に用いられ、主としてグレースケールが基準となる。
この場合の対象の色の質感とは、透明感を指す。
例えば、一般的なジルコニアと歯質を比較した場合、ジルコニアが明るく、歯質が暗いと表現することができる。

ラボサイドへは、透明感の強いものを『暗い』、透明感のないものを『明るい』と伝えれば良い。

『明度』は歯科技工物を歯列に調和させる点で、非常に重要な意味を持ち、補綴物が浮いて見える場合は、明度の違いが原因となっていることが多く、歯科技工物の選択にも役立てることが出来る。
シェードマッチには歯列への調和が最優先であるため、シェードテイキングの際にまっ先に確認しておきたいのがこの『明度』である。
一般に『暗い』ものは色が濃く、『明るい』ものは色が薄く見えるが、彩度の表現とは使い分けるようにすべきである。

g-s-shade
ビタパンクラシカルをモノクロに変換した画像

g-s-shade2
歯頸部を基準とし、明度順に並べ替えた画像
明度を基準とした場合は、彩度、色相に関係なくシェード番号がばらけているのが確認できる。
シェードガイドの中で、最も明るい色がB1だと勘違いされている場合も多いが、B1は最も彩度が低いシェードタブであり、最も明るいシェードタブはA1である。

1-2.彩度とは何か

彩度とは、色の”濃淡”を表現する際に用いられる基準である。
色の濃さとは、例えば黄色とオレンジ色を比較した場合、黄色は彩度が『低い』、オレンジ色は彩度が『高い』と表現することができる。
歯科分野でのシェードテイクでは、シェードタブの数字が小さいほど色が『薄い』、数字が大きいほど色が『濃い』ということになる。
ラボサイドへは、質感は歯列に調和しているものの、色が薄い場合に『彩度が低い』色が濃い場合に『彩度が高い』と伝えれば良い。

chroma
A系統での彩度の違い
(数字が大きくなるほど色が濃く見える)

1-3.色相とは何か

最後に色相という基準であるが、これは色の種類を表す際に用いる。
色の三原色と呼ばれる赤、緑、青のように、色の系統を示す際に”色相”を基準とする。
歯科分野では、ビタパンクラシカルで言うところの”A系統””B系統””C系統””D系統”の選択が、色相の選択である。

hue
A〜D系統による色の違い

ラボサイドへは、『赤みが足りない』『黄色みが強い』など、色の名前を含めて伝えれば良い。

1-3-1.A系統

ビタパンクラシカルでのA系統とは、赤茶系の色相を持つ。
多くの日本人はこのA系統の特徴を持っているため、シェードテイクの際は、明度の選択後、まず始めにA系統でのチェックを行う。
赤みの強さは日本人の特徴であるため、A系統よりもさらに赤みが強いケースも多い。

1-3-2.B系統

ビタパンクラシカルでのB系統とは、赤黄系の色相を持つ。
白人に多く、黄色が主となるため、A系統に比べ淡い色味に感じられる。
シェードテイク時の体感的には、A系統はオレンジ、B系統は黄色という印象になる。

1-3-3.C系統

ビタパンクラシカルでのC系統とは、グレー系の色相を持つ。
シェードテイク時の見た目では、かなり暗い印象になる。

1-3-4.D系統

ビタパンクラシカルでのD系統とは、赤みを帯びたグレー系の色相を持つ。
シェードテイクでは、明度の確認後、A系統、B系統、C系統のどれにも属さない場合に選択されることがある。

2.カラーチェックテスト

主に測色計やカラーキャリブレーション関連製品を製造販売している『x-rite』社が、一般向けに公開しているカラーチェックテストのサイトをここに紹介しておく。

x-rite社カラーチャレンジのページOnline Color Challenge(x-rite)

ランダムに並べられた『明度』『彩度』『色相』の異なるパネルを、左右のマスへグラデーションするよう並び替えるだけである。
ドラッグ&ドロップで並べ替え、順番通りに並んだところで、下の『Score Test』ボタンを押すとテスト結果がわかる。
性別や年齢別による点数が表示され、点数が低いほど色彩感覚が優れているということになる。
このテストを行うことにより、自分の不得意とする色相などもわかる。

ちなみにエムセラスタッフである著者のテスト結果はご覧の通り。
colorchallenge

歯科医師、歯科技工士の皆さまも、正確なシェードテイクの達成を目指して、是非挑戦してみてほしい。

まとめ

・歯列への調和は明度が影響し、明度は補綴物の種類にも依存する
・シェードテイク時の明度の違いは『明るい』『暗い』と表現する
・シェードテイク時の彩度の違いは『濃い』『薄い』と表現する
・シェードテイク時の色相の違いは『色の名前』を含めて表現する

おわりに

今回の記事では、シェードテイクの方法までは言及していないが、シェードテイクの後に最も重要となる、『指示の伝達方法』にクローズアップしてみた。
シェードテイキングにおいて、歯科医師、歯科技工士の双方に共通の基準を持ち、円滑なコミュニケーションが計られることを期待したい。

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