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歯科用分光測色計クリスタルアイの精度と開発秘話

今年の春頃、非常に残念なニュースが飛び込んできた。
エムセラでも長年使用している、オリンパス社製”歯科用分光測色計クリスタルアイ”の製造販売終了の知らせである。
販売終了予定のアナウンス後、数週間で売り切れたクリスタルアイにはどのような強みがあるのだろう。
歯科技工業界の中では写真にめっぽう強いと自負する筆者が、なぜクリスタルアイを必要とし、なぜ数ある測色機からクリスタルアイを選択したのか、その理由を述べてみたい。

クリスタルアイの修理期限

まず始めに、製造販売を終えたクリスタルアイの修理について確認しておきたい。
メーカーへ問い合わせたところ、2014年11月現在、どのような修理でも受け付けることが出来るとの回答を得た。
仮に落下して故障したとしても、修理は可能ということだ。
その期限は2017年末まで予定しているということなので、現ユーザーはしばらくの間は安心して使えるのではないだろうか。
”本体のバッテリー交換”については、販売元であるペントロンジャパン社が、2018年以降も引き継げるよう検討中とのことだ。

修理期限に関して、何か進展があればこのページに追記していきたい。

限度見本検査と測色検査

シェードテイキングの方法としては、限度見本(シェードガイド)を用いた、術者の目視による検査が一般的である。
実際に患者と対面しながら作業を進めることが出来れば、この方法は非常に有効と言えるが、患者への時間的な負担も大きく、術者の熟練度や体調にも左右されるため、付きっきりでの作業は現実的ではない。

そこで重要となるのが、再現性の高い色データを、作業現場(ラボラトリー)へ持ち帰ることである。
優れた測色計で計測されたデータは、誰の目にも等しく判断できるように数値化され、色情報を記録していくことが可能だ。

カメラと分光測色計

一般販売されているカメラが再現できる色域は、『RGB』の3bandが基本となっている。
一般的なデジタル一眼レフカメラで撮影されたデータは、人の目の色域と比較した場合、再現できる色域が狭いため、その範囲から外れた色情報を強制的に3band内に収めてしまう。
綺麗で高精細な”好ましい”画像が得られる反面、忠実な色の再現という点では期待できない。

7band
(画像:ペントロンジャパンHPより引用)

一方クリスタルアイの測色域は7bandあり、人間が知覚する歪な色域の約90%をカバーしている。
人間に備わった視覚域の色をそのまま情報化するため、正確なデータが得られるわけだ。

クリスタルアイの合理的なワークフロー

歯冠修復におけるシェードテイキングこそ、クリスタルアイに備わる機能の真骨頂だと言える。
デジタルカメラを使用した通常のシェードテイキングには、クリアしなければならない様々な問題が存在する。
特に大きな障壁となるのが環境光の統一だろう。

理想的な環境の条件については割愛するが、光のコントロールこそがデータ化成功の鍵である。
ひとつ言えることは、遮光環境下での人工光でなければ光をコントロールできず、環境光の統一は不完全に終わるということだ。

      ・ほぼ完全な遮光環境を作り出す

 

      ・常に一定の露出とホワイトバランスを得る

 

    ・画像データを同一画面上で表示する

以上の3つを全てクリアするのがクリスタルアイのシステムである。

ひとつのファイルとして画像データを同一画面上で表示するため、出力時のモニターキャリブレーションを気にする必要もない。
そもそも分光測色計に、モニター出力としての正しい発色や高解像度を求める意味は少なく、精度の高い計測データを数値化できていれば、目的は達成されていると言って良いだろう。

専用アプリケーションも非常によく作られており、臨床にも研究にも役立てることが可能だ。

*実際の作業のながれについてはクリスタルアイについてを参照

クリスタルアイのコンタクトキャップ(開発秘話)

付属するコンタクトキャップの目的は『撮影時に遮光環境を作り出すこと』と『撮影距離を一定に保つこと』の2つが挙げられる。
クリスタルアイでは、このコンタクトキャップにも、随所に工夫がなされている。

コンタクトキャップは、クリスタルアイ本体にぴったりとフィットするように設計され、本体横のノブに引っ掛けることが出来るため、撮影距離の指針がずれることはない。
先端部に設けられた複雑な形状は、十分な遮光条件が整うように設計されており、7種類の試作品から最も均等な条件で撮影できるデザインが採用されている。
crystal-contact

      1、切縁方向からの遮光板

 

      2、舌側面のストッパー

 

      3、唇面アーチ状の遮光板

 

      4、仮想の撮影平面

 

    5、歯肉部の遮光板

撮影時の被写体(歯牙)の水平的位置は、厳密には4の位置となるが、撮影可能な許容範囲としては、おそらく4~5の範囲内に収めていれば問題はないだろう。

ここである程度の許容範囲が生まれることも、コンタクトキャップの重要な役割であると考えている。

逆2乗の法則*(光の減衰の法則)という言葉があるが、コンタクトキャップの存在がクリスタルアイ本体の光源を遠ざける役割を果たし、シビアな撮影距離の中にもわずかなゆとりを残している。
これはマクロ撮影が前提となる歯冠測色においては非常に重要なポイントである。

*逆2乗の法則(参照:ウィキペディア)

クリスタルアイの露出とホワイトバランス(開発秘話)

クリスタルアイ本体の発光部には45°の照射角があり、被写体となる歯牙に均一な光を当てることが可能だ。

そこで疑問となるのは露出の決定方法である。
というのも、被写体を光源に極端に近付けたテストを行った際、露出の不足した画像となることがあったためである。
結論から言えば、被写体が光の照射範囲から外れていたために、適正な露出が得られなかったことが原因である。

crystal-cal-plate
クリスタルアイにはクレイドルと呼ばれる台座があり、撮影の都度クレイドル上でキャリブレーションを行う。
クレイドルにあるキャリブレーション用の板に、クリスタルアイ本体から発光して補正を行う仕組みだが、このキャリブレーションで、ホワイトバランスの調整と共に、露光量の調整も行っているのだ。
つまり撮影時はマニュアル固定状態での撮影ということになるが、いくつかの疑問も生じる。

通常のストロボ光源に関しても、光源の寿命やバッテリーの具合、チャージタイムによって、光量にバラつきが生じるためだ。
クレイドル上ではそれら全てを補正し、最適な設定で撮影できるようになされている。
撮影可能時間に制限があるのもそのためかもしれない。

光源の寿命などによって、補正可能な範囲を超えてしまった場合、エラーが発生し、撮影は出来ないように設計されている。

一方ホワイトバランスの補正はというと、一定の反射率を有するキャリブレーション用の板は、A3を基本とした色調をもっており、より歯科用に特化した補正を行うことができる。

残された心配事と言えばキャリブレーション用の板の劣化だが、この板はホーローに近い特殊な素材で作られており、経年劣化による変質や退色をしないように工夫されている。

おわりに

明確なコンセプトと一貫性を持ったクリスタルアイのシステムが、どれほど歯科に特化し、いかに慎重な開発が進められてきたのかがご理解いただけたのではないだろうか。
これほど優秀なシステムが業界から去ってしまうのは非常に残念なことである。
後継機種が開発されることは無いに等しいということだが、クリスタルアイに代わる新たな歯冠測色器の登場を切に望みたい。

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