リファレンス

歯科用金属アレルギーとメタルフリーレストレーション

Mセラミック工房では初代エンプレスの登場とともにメタルフリーレストレーションに重点的に取り組み、現在でもプレッサブルセラミック、ジルコニアセラミックなどのオールセラミック技工を中心に、金属を極力使用しない歯科技工物を届けられるよう歯科医院に提案している。
全ての患者がアレルギーの症状を発症するとは限らないものの、患者本位の治療というものを目指す以上、金属を使用しない技工物を正しく説明し提供していくことは非常に重要だろう。
いま一度アレルギーのメカニズムとメタルフリーレストレーションの重要性について考察してみたい。

アレルギーの正体

アレルギーとは非常に複雑な免疫異常の症状であり、原因や症状は人によって異なる。
免疫とは生まれつき身体に備わる防御機能であり、自分以外の物質が体内にとりこまれた際に、栄養となるものか害となるものかを判断し、それが害となるものであれば攻撃し体外へ排除しようとするシステムである。
本来であれば身体を守るべき免疫機能が”アレルゲン”(アレルギーの原因となる物質や状況)に対し、過剰に働きかけることで発症するのがアレルギー性疾患である。
花粉症やアトピー性皮膚炎、ぜんそくなどもアレルギー性疾患である。

アレルギーの発症とアレルギー体質

アレルギーは身体に備わる防御機能の変調がもたらす症状であるため、慢性化しやすく完治しにくいのが特徴でもある。
また、感染症のように条件が揃えば誰でも発症するようなものではなく、多くの場合は歯科治療で金属を使用しても何も症状はでない。
逆に言えば一見全く問題ないような微量の金属でも、ひどい症状を引き起こす患者もいれば、ある日突然アレルギーを発症する場合もある。
現代の日本人でアレルギーを発症しているのはおよそ3人に1人の割合といわれているが、発症はしていないもののアレルギー体質になってしまっている人は、国民の過半数を超えていると考えられている。
その中でも特に中高齢の女性に多いとされ、季節の変わり目に急に発症したり、更年期障害と同時に発症することも多い。

金属アレルギーのメカニズム

アレルギーには食べ物アレルギーや花粉症のような”即時型アレルギー”と呼ばれるものと、金属アレルギーのような”遅延型アレルギー”とに分けることができる。
金属製の時計などを身に着けた際、汗などと反応し赤くかぶれた経験があるかもしれないが、あれもアレルギー反応であり金属の陽イオンが微量に溶け出したことでアレルギー反応を起こしたものである。
歯科での金属アレルギーは更に複雑で、口の中の金属から陽イオンが溶出し血液の中に取り込まれ、陽イオンは身体のどこかに運ばれる。その後皮膚や粘膜のタンパク質と結びつくことで、免疫機能のターゲットとなりアレルギー反応が引き起こされると考えられている。
すなわち金属アレルギーを引き起こしやすい金属とは、陽イオンが溶出しやすい金属であると言える。

歯科金属アレルギーによる代表的な症状

全身に現れる症状として最も多く報告されているのが”掌蹠膿疱症(しょうせきのうほうしょう)”である。
掌蹠(しょうせき)とは『手のひら』『足のうら』という意味で、そこに膿をもった水疱(膿疱)が発現する。他人に移る事はないが発症までの経過が長く、再発性が非常に高いという性質がある。
痛くて歩けないほどに重症化することもあり、皮膚科の特定疾患のひとつに数えられている。
当然ながら歯科金属だけが原因というわけではないが、他に原因が見当たらない場合に歯科金属を除去すると改善されることがある。

アレルギーを引き起こしやすい歯科用金属

  • 水銀
    アマルガムに含まれる。
  • ニッケル
    矯正用ワイヤーなどに含まれる。
  • コバルト
    義歯のクラスプなどに含まれる。
  • クロム3価、6価
    歯科用合金に含有されているものがある。
  • パラジウム
    多くの歯科用合金に含まれる。

ガルバニー電流とアレルギー

2種以上の金属が口腔内に存在する場合、唾液を電解液として”ガルバニック電流”と呼ばれる微量の直流電流が流れることは昔から知られていたが、このガルバニックアクションが起こっているとき、歯科金属からは大量の陽イオンが溶出している。
同一口腔内での異種金属の使用は歯科金属アレルギーの発症を促す可能性があると考えられている。

歯科用金属の代替材料

金属アレルギーであることが判明した場合は当該補綴物を除去し、他の材料で作り直さなければならない。
パッチテスト等で陽性反応が出た金属を使用しないのは当然として、陰性の金属であれば安全というわけでもない。金属を使用しない歯科技工物に置き換えるのが重要である。
これを”メタルフリーレストレーション”あるいは単に”メタルフリー”と呼ぶ。具体的にはオールセラミック修復やハイブリッドジャケット修復、ジルコニア修復などである。
場合によってはメタルボンド(陶材焼付鋳造冠、セラモメタルクラウン)のことをセラミック修復として考えられることもあるが、これはベース部分に金属を使用しているのでメタルフリーではない。基本的な補綴物の構造を理解しておく必要がある。

  • レジンジャケット冠
    症例により保険が適用される。
  • ハイブリッドジャケット冠
    CAD/CAM冠など、症例により保険が適用される。
  • ファイバーコア
    症例により保険が適用される。
  • オールセラミック冠
    e.max修復やセレック修復など生体親和性が高い修復。
  • ジルコニア冠
    強度が高く、最も生体親和性が高い修復。

歯科金属アレルギー外来のある大学病院

奥羽大学歯学部附属病院(福島県)
新潟大学医歯学総合病院(新潟県)
東京医科歯科大学歯学部附属病院(東京都)
東京歯科大学千葉病院(千葉県)
神奈川歯科大学附属病院(神奈川県)
愛知学院大学歯学部附属病院(愛知県)
長崎大学歯学部附属病院(長崎県)

おわりに

掌蹠膿疱症やアトピー性皮膚炎、重度の慢性疲労や自律神経失調症など、それらの原因が常に歯科用金属によるものだとは限らないが、稀に歯科の金属が医科で認知されていない場合もあるため、専門である歯科でも十分な説明と治療を行うことが望ましいだろう。
歯科治療のやり直しは時間も費用もかかり治療内容が制限される場合も多いため、メタルフリーレストレーションの重要性を初めから考慮し、様々なケースに対応できるような準備が必要ではないだろうか。

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